『エリザベート』が愛される理由 4年ぶりのトート役(井上芳雄)
井上芳雄です。1月11日から福岡・博多座でミュージカル『エリザベート』に出演しています。黄泉(よみ)の帝王トート役を演じるのは4年ぶり。東京、名古屋、大阪、福岡と4都市での公演ですが、僕は福岡公演のみに出演。稽古期間が短くて大変でしたが、始まってみれば、これまでとまた違うトートになっているのが面白いと感じています。この役はもう何回も演じていますが、そのたびに発見があります。それは『エリザベート』という作品の大きな魅力でもあります。 『エリザベート』の公演の前、昨年末の大みそかは年越しのお笑い番組『笑って年越し! 世代対決 昭和芸人 vs 平成・令和芸人』(日本テレビ系)に審査員として出演しました。12月31日の17時~24時30分まで7時間半の生放送です。東野幸治さんとナインティナインさんがMCで、出川哲朗さんと後藤輝基さんが率いる昭和芸人チームと、かまいたちさんが率いる平成・令和芸人チームがネタバトルを繰り広げました。 お笑いの番組の審査員をやるのは初めて。生放送で7時間半という長さに驚いたし、ずっとスタジオにいて、気がついたら年を越していたのも不思議な感じでした。なにより圧倒されたのが芸人さんたちのバイタリティー。売れている方は年末年始テレビに出ずっぱりだと思うので、そのタフさはすごいです。 お笑いは、ライブとかは行ったことがなくて、番組で一緒になった方のネタを拝見するくらいでしたが、基本的に笑いは好きなので、楽しく見させていただきました。昭和の大御所といわれる人たちの漫才は、普段なかなか見る機会がないので、今の笑いと違う独特の面白さ。テンポもゆっくりで、頭をはたいたり、身体的な特徴をネタにしたりする点にも昭和を感じました。一方、今の芸人さんは、同じ時間でも笑いの数というかネタが多くて、息をつかせずにどんどん畳み掛けます。一口にお笑いと言っても、漫才もコントもあるし、しゃべりで笑わせるものもあれば、シュールなドラマで最後にドキッとさせるものもあって、バリエーションが豊富でしたね。 審査員としては、自分の感覚に忠実に、真剣に勝敗をつけました。結果として、勝った方への投票が多かったと思うので、そう外してなかったんじゃないかな。コメントも最初は、笑いの数が多かったとかネタの勢いが、と言っていたのですが、途中から専門家じゃないのでガチで言わなくていいんだと思い、後半は自分なりの笑いが取れるようにと心がけました。いつコメントを求められてもいいように準備していたので、長時間にわたって集中力が必要でしたけど、いい経験になりました。司会の東野さんは『行列のできる相談所』(日本テレビ系)でご一緒しているので、安心して審査できました。 その『行列~』には、MCを含めて昨年ずっと出ていたので、僕のことを知らない人の中でしゃべることには慣れてきたように思います。実は大みそかの数日前、12月27日に帝国ホテルで「イヤーエンド ランチ&ディナーショー」がありました。お客さまは、僕のことをよく知っていて、歌とトークを聞くために来てくださった方なので、僕にとってはホームといえる場所です。そこでしゃべったときに、「あれ、どういうテイストの感じで話せばいいんだっけ」と、一瞬戸惑いました。それくらい昨年は、僕のことを知らない人の中で話す機会が多かったのです。久しぶりのホームで「ここは自分のことだけをしゃべってよくて、お客さまに甘えていいところなんだ」と思えたのは、逆に新鮮でした。 そんなアウェーでのトークが多かった昨年の締めくくりが審査員でしたが、大みそかにテレビの生放送に出たのも初めてです。年末年始は休みたいという気持ちがありつつも、メディアに出られたのは喜ばしくもありました。演劇は年越しの公演はあまりないし、元日も基本的には休みます。そういうときにテレビに出してもらうと、止まらずに仕事をやれている感じがして、芸能の世界に身を置く者としては光栄なことです。